art node トーク ふたつのfather
私たちの多くは個として生を受けると同時に、家族という括りを受けながら日々生きています。このあがらえない単位の中で、子は、「父」や「母」が本来「個」である事を視界から遠ざけて過ごしていると言えます。
離婚や死別ということによって生じる個々の距離感とは事情が異なる、実の父の失踪を扱った金川晋吾の写真は、何を考えているのか、なぜ蒸発するのかといったわからない事をわかろうというプロセスとは違い、わからない事を受け入れる行為であると同時に、決して覗く事のできない人間の深部が確かにそこにあることを提示しています。
一方、映像作家で写真家でもある西澤諭志は、金川のそういった行為を、父との会話を含め映像記録することを通し、金川自身も記録される対象となる状況を作り出すことによって、同等な個と個から表出する、身振りや態度、そして言語のその奥に、見えないもうひとつの生身の人間をを浮かび上がらせて行きます。
今回は、ふたりが制作したふたつの「father」を展示・上映するとともに、ふたりの作家によるトークを開催する事により、それぞれの作家の成り立ちと共に、人間の中に存在するもうひとつのわからないありようについて、語っていただきます。(司会・聞き手/小岩勉)
ゲストプロフィール
金川晋吾(かながわ・しんご)1981年、京都府生まれ。神戸大学発達科学部人間発達学科卒業。東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻博士課程修了。 第12回三木淳賞受賞。2016年に 青幻舎より『father』刊行。最近の主な展覧会に、2016年「悪い予感のかけらもないさ展」あざみ野市民ギャラリー(神奈川)、2015年「STANCE or DISTANCE? わたしと世界をつなぐ「距離」」熊本市現代美術館(熊本)など 。
http://kanagawashingo.com/
西澤諭志(にしざわ・さとし) 1983年長野県生まれ。2008年東北芸術工科大学映像学科卒業。2011 「ドキュメンタリーのハードコア」SANAGI FINE ARTS(東京)、2009年「過視は不可視か」SANAGI FINE ARTS(東京)、2009年「西澤諭志 展 ?写真/絶景 そこにあるもの?」INAXギャラリー2(東京)、2014年2月2日「只石博紀・西澤諭志 映像作品上映会」space dike(東京)、2013年「火曜講座 西澤諭志『百光』上映」立教大学新座キャンパス6号館ロフト2(埼玉)、2013年「float:CINEMA 04 “百光”」float(東京)、2013年「KYOTO EXPERIMENT 2013 フリンジ企画:使えるプログラム 西澤諭志『百光』上映会」VOX SQUARE(京都)など。2015年金川晋吾の撮影を記録したドキュメンタリー「金川晋吾《father》上映」熊本市現代美術館(熊本)
http://satoshinishizawa.com
トーク:2017年8月26日(土)18:00-20:00 (トークのみ入場料500円/定員25名先着)
展覧会・上映:2017年8月21日(火)-8月27日(日)11:00-19:00/最終日17:00まで