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保坂 涼子 展 -神話作用-

ふっ、と幼い頃の川遊びの情景が呼び起こされた。裸足になって対岸から彼岸へ行きつ戻りつする。水温の冷えた感じとは、対照的な川底に横たわる石のぬるりとした質感が生々しい。石の表面は、みどりの藻、のようなものでびっしりと覆われて、外界との接触を絶つかの如く、異質なものとして存在していた。
石という強固な無機物は、地球上に物質として産み出された記憶をその固まりの内部に秘めている。人間の手に依って、地中の奥深くから掘り出され、(或は、岩盤から切り離されて)はじめて地上の新鮮な空気に触れ、物質としての息を吹返すわけである。
地面の上にゆっくりと、雨水が浸透してゆくような速度で、私は、石の内部にまで作用し、素材の持つ物性の記憶を溶解しようと目論む。磨き上げた滑面は、私が素材に介入した足跡を痕として残したくないという思いからだ。モチーフの具象的再現、自然描写を目指すものでは、ない。メディウムの生を受容し、客体化された一個のオブジェとして空間に放出する価値の変換である。
Biography
1979年 福島県生まれ
2004年 武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒業
Works
2002年「horobi-na」設置(福島県須賀川市翠が丘公園)    
2004年武蔵野美術大学平成15年度造形学部卒業制作優秀作品・修了制作選抜展(武蔵野美術大学美術資料図書館)
    「結い」設置(福島県須賀川市あきない広場)
    第68回新制作展(東京都美術館 上野)
2007年 個展『南国の思想』(ギャラリー山口 京橋)
    グループ展 アートジャム”gift”展(ギャラリー山口 京橋)
2013年 第77回新制作展(国立新美術館 六本木)

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